「退職所得控除の調整規定の見直し」 がいよいよ始動!税理士が読み解く、制度の本質と実務のツボ

2026年・令和8年、今日から仕事始めというビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。 新しい手帳を開き、今年の目標に強い思いを!そんな清々しい新年のスタートに、早速ですが、本年1月1日から適用されるニュースをお届けしなければなりません。

退職所得控除額の調整計算の見直し、つまり「DC一時金→退職一時金」のケースが、本年1月1日以後に受け取る退職手当等について適用されます。

「えっ、新年早々、増税の話?」と眉をひそめないでください。この改正、単なる「計算ルールの変更」ではありません。企業の退職金実務、そして個人の資産形成戦略の根幹に関わる、まさに構造的なパラダイムシフトなのです。


1. 「5年ルール」の終焉と「10年ルール」の真実

これまで、iDeCoや企業型DC(確定拠出年金)を一時金(老齢一時金)で受け取り、その後「5年以上」空けて会社の退職金を受け取れば、退職所得控除の枠を事実上「再利用」できていました。「重複期間の調整計算なし」ってヤツです。

しかし、本年からは、この間隔が「10年(前年以前9年以内)」に延長されました。今までなら、例えば60歳でiDeCo一時金、65歳で会社退職金 それぞれフルに退職所得控除額を使えていましたが、このケースだと70歳以降に会社退職金を受け取らないとフル適用できない(重複期間の調整が適用される)ことになります。

「国が節税を封じに来た」と感じるビジネスパーソンも多いかもしれませんが、私はもう少し深く捉えています。 これは、働き方の多様化(転職の増加、定年延長)と、iDeCo・NISAといった自助努力支援制度の普及を背景にした、「課税の公平性」を再定義するための構造改革です。短期間での控除の二重取りを是正し、長期的な資産形成を促すという制度趣旨への回帰と言えるでしょう。

【超重要】ここが実務の分岐点!「小規模企業共済」は改正なし

ここで、声を大にしてお伝えしたいポイントがあります。 今回の「10年ルール」の対象は、あくまで「確定拠出年金法の一時金」を先に受け取った場合です。

中小企業経営者や個人事業主の強い味方である「小規模企業共済の老齢給付(一時金)」については、今回の改正対象外!従来通り「5年ルール」が維持されています。(中退共も同じく

  • DC一時金 → 退職金:間隔は10年必要(厳しい!)
  • 小規模企業共済 → 退職金:間隔は5年でOK(据え置き!)

この違い、実務では決定的な差となります。出口戦略の練り直しが必須です!


2. 事務負担の増加

その1:書類の保存期間が「7年」から「10年」へ

10年ルールに合わせて、「DC一時金に係る退職所得の受給に関する申告書」の保存義務が10年に延長されました。過去の記録をより長く、確実に保管する体制が求められます。

その2:源泉徴収票の税務署提出が「全員」に!

これまで、退職所得の源泉徴収票を税務署へ提出するのは、「役員」のみでした。 しかし、これからは「従業員を含むすべての受給者」の源泉徴収票を、税務署(と市区町村)へ提出しなければなりません。

総務・人事部門も影響があります。 中途採用者の退職金計算時に、「前職でDCを受け取っていないか」を10年遡って確認するフローの構築、退職所得に係る源泉徴収税額の計算方法(重複期間があるパターン)を再確認しなければなりません。


3. 新時代の幕開けに、賢明な対応を

いかがでしたでしょうか。本年の改正は個人のライフプランにも、企業の管理部門にも、静かですが変化をもたらします。

  • 個人は、退職金の受け取り順序を再シミュレーションする。
  • 企業は、事務フローの再構築、退職所得控除の計算方法の確認。(源泉徴収税額に影響)

変化をチャンスに変える、賢明な一歩を新年から踏み出していきましょう。 今回の記事は本年1月5日時点の状況を基に作成しています。