「今期は営業利益が増えた。税引後利益も増えた。」この点に注目してしまうことは多いと思います。
企業の資金提供者である債権者・株主から見れば、「期待する収益率(=要求収益率)に達しているか」が重要になってきます。債権者にとっては利息であり、株主にとっては配当と株価上昇益になります。企業が債権者や株主に負担するこれらのコストを「資本コスト」といいます。
資本コストは負債コストと株主資本コストを加重平均して求め、WACC(ワック)と呼ばれます。負債と株主資本の比率が4:6、税引後負債コストが3.5%、株主資本コストが10%であれば
WACC=0.4×3.5%+0.6×10%=7.4%
この企業であれば、資金提供者である債権者・株主の要求に応えるために、資産を活用して生み出すべき収益率が7.4%になります。WACCが高ければ投資家のリスク認識が高い、つまり高いリターンを求めていることになり、企業にとっては資金調達のためのコストが上昇し、株主価値の減少、株価の下落につながります。
税引後営業利益を投下資本(有利子負債+株主資本)で割った数値を投下資本利益率(ROIC)といい、これは事業のために投下した資本に対して、どれだけのリターンを得たかを示すものです。
ROIC>WACC
ROICとWACCとの差をEVAスプレッドと呼び、経営者はこのEVAスプレッドをプラスにする、より大きくすることが経営を委託された者としての使命といえます。「黒字決算になった。」だけで喜んではいけません。「10%の増益になるために2倍の資本を投下していた。」では当然にROICは低くなり、EVAスプレッドがマイナスになる可能性もあり、それでは投資家からの期待には応えていないことになります。
役社員に株式報酬を導入する企業も増えていますので、EVAスプレッドを意識し株価を上昇させること、米国のように役員報酬を株価に連動させること、資金の調達サイドを意識して経営することが企業価値の向上につながると感じます。
