株主資本コスト

債権者(例えば金融機関)が要求するリターンである「負債コスト」に対し、株主が要求するリターンを「株主資本コスト」といいます。株主から見れば、これくらいのリターンは要求したい、というものです。負債コストはハッキリとした数字がでてくるのでわかりやすい(借入金利など)ですが、株主資本コストに関しては、それぞれの株主の要求収益率が異なってくるので、それを考慮に入れて数字を出す必要があります。

取引相場のない株式の評価に関し、配当還元方式を使用する際、還元率を現行の10%の固定率に代え「株主資本コスト」によるべきと指摘する意見があります(税務大学校論叢96号)。10%という高い還元率で割ることで、評価額が低くなっていることも注目ですね。

株主資本コストの求め方として最も多く使われているのがCAPM(キャップエム)という理論です。

株主資本コスト=リスクフリーレート+β×マーケットリスクプレミアム

リスクフリーレートとは国債に投資した場合に投資家が要求する収益率のことで、ここでは現在の個人向け5年国債の利回り0.33%を使います。

β(ベータ)とは株式市場全体の変動に対して、その会社の株式がどれだけ連動するかということを表した数値です。株式市場と同じ値動きをする株式の数値は1になります。ロイターのWEBサイトで調べられますので、今回は楽天グループ株式会社の10月11日時点のβ値0.88を使います。

マーケットリスクプレミアムとは国債利回りを超える部分、つまり投資家がリスクをとっていることによる報酬分のことです。10月11日時点のインデックスファンドTOPIXの5年利回りが6.65%ですので、5年国債の利回りとの差(6.65%-0.33%=6.32%)がリスクプレミアムになります。

0.33%+0.88×6.32%=5.89% これが楽天の株主資本コスト(個人投資家向け)になります。

取引相場のない株式(=上場していない株式)を配当還元方式でCAPM方式を用いて株主資本コストを求める場合、特にβ値をどのように求めるのかが問題になり、個人的には今後の展開に注目しています。(現在の10%よりも低くなれば、株式評価は上昇します。)

信託型ストックオプション

税務上の取り扱いが話題にあがっている信託型ストックオプション。国税庁は権利行使時における時価と権利行使価額との差額は「給与所得」としています。

ストックオプション導入側とすれば非課税としたい。役職員がストックオプションで手に入れた株式を市場で売却した際に、売却価額と権利行使価額との差額をまとめて上場株式分離の譲渡所得として20%(住民税込み、復興税除く。以下同じ。)の税負担で済ませてあげたい、のが導入目的のひとつだと思います。

国税庁の見解では「権利行使の時点で給与所得」となりますので最大で55%の税負担になります。また、源泉徴収の対象になりますので差益部分を給料として、対応した源泉徴収税額を役職員から徴収し納付することになります。

この源泉徴収に関して役職員に求償するのが原則ですが、なかなか理解を得るのが難しいケースも考えられます。実際には会社負担とするところもあるでしょう。求償権を放棄した金額は役職員に対する債務免除と考え、グロスアップ計算で放棄した時の給与となり、「源泉に源泉が発生する」なんともカオスな状態になります。

国税庁の資料では、権利行使価額は純資産価額方式を使用できる、ケースも示されています。特に事業開始から間もないスタートアップにすると、純資産価額は低いことが予想されます。つまり低い価額の権利行使価額が設定可能になりますので、この点はメリットがあると感じます。

日本経済新聞8月28日の朝刊で、この給与所得課税に関し上場新興13社が源泉所得税の返還を求める訴訟を検討しているとのことです。更にカオスな状態になりそうで目が離せません。

ふるさと納税ランキング

ここ数年、ふるさと納税の市場が活況になっています。8月1日 総務省より「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度実施)」が発表されました。

〈受入額ベスト5〉

団体名受入額
1位宮崎県都城市195億円
2位北館道紋別市194億円
3位北海道根室市176億円
4位北海道白糠町148億円
5位大阪府泉佐野市137億円

この調査結果によると、自治体における返礼品の調達原価ほか費用は約47%とのことです。つまり受入額の約半分が企業会計で言う販売利益になります。自治体にとっては大きな収入になりますね。

また、住民税控除額の実績も公表されました。

団体名控除額
1位神奈川県横浜市272億円
2位愛知県名古屋市159億円
3位大阪府大阪市148億円
4位神奈川県川崎市121億円
5位東京都世田谷区 98億円

これは「市町村民税を他の自治体に取られたランキング」とも言えます。人口の多い大都市から地方にお金が流れていることがわかります。

納税者から見ると、ふるさと納税をしても、しなくてもキャッシュ・アウトは同じです。(足切りの2,000円は無視します。)よって厳密な意味での節税ではないのですが、返礼品がゲットできますので、そこが得したことになります。返礼品の調達原価が約28%との調査結果ですので、「10,000円寄付したら、10,000円税金が少なくなって、約3,000円の返礼品をゲットできた。」のイメージです。

ゲットした返礼品は一時所得になります。一時所得は年間収入が50万円を超えると課税対象になります。返礼品の調達原価を考えると、50万円を超える価値のある返礼品をゲットするには、年間で約170万円のふるさと納税をしなければなりません。よほどの高額所得者でないと控除限度額に引っかかります。(控除限度額は個人の所得金額によって異なります。)

ふるさと納税は地域特産の返礼品を楽しめるだけでなく、日本の地方創生に貢献する制度でもありますので、ぜひ一度試してみてください。