退職所得は確定申告不要?

今年も所得税・確定申告の時期が近づいてきました。今年は2月が1日多いので、3月15日まで1日余裕が持てますね。期限がある仕事ですので、1日でも大きく感じます。

退職金を受け取ったら確定申告はどうなるのでしょうか。通常は「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出して、対応する源泉税を引かれて終わり。この場合、確定申告してもいいし、申告不要でもいいです。

ここがポイントで、申告不要でもいいのですが、「退職所得は合計所得金額を構成する」ことになります。申告不要であっても、所得を構成する。なんだか難しくなってきましたが、合計所得金額が変わると、基礎控除額が変わります。

合計所得金額基礎控除
2,400万円以下48万円
2,400万円超2,450万円以下32万円
2,450万円超2,500万円以下16万円
2,500万円超  0円

オーナー企業経営者の場合、退職金の他に、配当所得・不動産所得・退職までの給与所得などの所得が考えられます。合計所得金額が大きくなると、基礎控除額が小さくなるケースがあります。基礎控除額の計算には注意しないといけません。(このほか、配偶者控除など注意が必要なケースがあります。)

特定口座(源泉徴収あり口座)はどうでしょうか。ここは純粋に申告不要を選択でき、かつ、申告不要を選択した場合は合計所得金額を構成しない、ことになります。多額の譲渡益が発生した年は申告不要を選択した方が良いケースもあります。

「合計所得金額」所得税で頻繁に登場するワードです。「課税標準の合計額」とも異なります。長くなるので説明は省略しますが、個人の所得は奥が深いです。

EVAスプレッドを意識する

「今期は営業利益が増えた。税引後利益も増えた。」この点に注目してしまうことは多いと思います。

企業の資金提供者である債権者・株主から見れば、「期待する収益率(=要求収益率)に達しているか」が重要になってきます。債権者にとっては利息であり、株主にとっては配当と株価上昇益になります。企業が債権者や株主に負担するこれらのコストを「資本コスト」といいます。

資本コストは負債コストと株主資本コストを加重平均して求め、WACC(ワック)と呼ばれます。負債と株主資本の比率が4:6、税引後負債コストが3.5%、株主資本コストが10%であれば

この企業であれば、資金提供者である債権者・株主の要求に応えるために、資産を活用して生み出すべき収益率が7.4%になります。WACCが高ければ投資家のリスク認識が高い、つまり高いリターンを求めていることになり、企業にとっては資金調達のためのコストが上昇し、株主価値の減少、株価の下落につながります。

税引後営業利益を投下資本(有利子負債+株主資本)で割った数値を投下資本利益率(ROIC)といい、これは事業のために投下した資本に対して、どれだけのリターンを得たかを示すものです。

ROIC>WACC

ROICとWACCとの差をEVAスプレッドと呼び、経営者はこのEVAスプレッドをプラスにする、より大きくすることが経営を委託された者としての使命といえます。「黒字決算になった。」だけで喜んではいけません。「10%の増益になるために2倍の資本を投下していた。」では当然にROICは低くなり、EVAスプレッドがマイナスになる可能性もあり、それでは投資家からの期待には応えていないことになります。

役社員に株式報酬を導入する企業も増えていますので、EVAスプレッドを意識し株価を上昇させること、米国のように役員報酬を株価に連動させること、資金の調達サイドを意識して経営することが企業価値の向上につながると感じます。

負債利子と企業価値

投資プロジェクトを判断する際、その資金をエクイティ・ファイナンス(株主資本)で準備するのか、デット・ファインス(銀行借入や社債)で準備するのか、どちらで進めるのがよいのでしょうか。

法人税率30%・借入5,000万円・利率5%と仮定します。

【単位:万円】負債なし負債あり
営業利益8,0008,000
支払利息  0 250
税引前利益8,0007,750
法人税2,4002,325
税引後利益5,6005,425
株主へ5,6005,425
債権者へ  0 250
資金提供者・計5,6005,675

資金提供者である株主・債権者の取り分は、負債ありのパターンの方が75万円多くなります。これは法人税が75万円少なくなっている分が回ってきています。株主・債権者トータルから見た企業価値を考えると、負債ありの企業の方が価値が高いことになります。

これは有利子負債の節税効果(tax shield)が働いていることになります。

5%×(1ー30%)=3.5% これが実質の負債コストになり、上記の例では5,000万円×3.5%=175万円(支払利息250万円から安くなった税金75万円を引いた金額)になります。

設備投資のための借入の際は約定利率だけでなく、節税効果も考慮した実質利率で判断することが重要です。上記の経営者は負債コスト3.5%、これを把握しておけば将来得られるキャッシュフローの現在価値を算出し、投資すべきかの判断の際に役立ちます。

一方、デット・ファインスによって税収が減っていることになります。資金調達の方法の違いで税収にまで影響してくるので、奥が深いですね。(エクイティ・ファイナンスが活況になれば税収が保たれる。)